店舗を開業しようと資金計画を立ててみると、「自己資金だけでは足りないかも」と感じることもあると思います。
物件取得費や内装工事、設備購入、仕入れ、開業後の運転資金まで考えると、店舗開業にはまとまった資金が必要です。そこで確認しておきたいのが、日本政策金融公庫の創業融資です。
日本政策金融公庫には、これから事業を始める人や創業後間もない人を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。
ここでは、2026年9月8日時点の制度内容をもとに、店舗開業で利用を検討するときに知っておきたいポイントを見ていきましょう。
「新規開業・スタートアップ支援資金」とは?
「新規開業・スタートアップ支援資金」は、日本政策金融公庫の国民生活事業が取り扱う創業者向けの融資制度です。
対象になるのは、これから新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人です。
融資された資金は、開業や事業開始後に必要となる設備資金・運転資金に使えます。
2026年9月8日時点の主な条件は次のとおりです。
- 融資限度額:7,200万円
- 設備資金:返済期間20年以内(据置期間5年以内)
- 運転資金:返済期間10年以内(据置期間5年以内)
「7,200万円まで借りられるなら、自己資金が少なくても大丈夫なのでは?」と思うかもしれませんが、もちろん上限額まで自動的に借りられるわけではありません。
実際の融資額は、必要な資金、自己資金、事業計画、返済可能性などを踏まえて審査されます。
創業期は原則として無担保・無保証人
日本政策金融公庫の創業融資で大きな特徴となるのが、創業期の取扱いです。
これから事業を始める人、または事業開始後まだ税務申告を2期終えていない人は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。
また、この創業期に該当する場合は「創業支援貸付利率特例制度」により、各融資制度に定められた利率から原則0.65%引き下げられます。
さらに、雇用の拡大を図る場合は0.9%の引下げとなります。
融資の利率そのものは、利用する制度や条件、申込時点の金利によって変わるため、「創業融資なら何%」と一律に決まっているわけではありません。ただ、創業期にはこうした優遇が用意されているので、これから店舗を開業する段階なら確認しておきたい制度だと思います。
自己資金は何割必要?
創業融資について調べていると、「自己資金は創業資金の10分の1以上必要」という情報を見かけたことはありませんか?
これは以前の「新創業融資制度」にあった要件です。現在の「新規開業・スタートアップ支援資金」には、自己資金を○%以上用意しなければ申請できないという一律の要件はありません。
とはいえ、「自己資金ゼロでも問題ない」という意味ではありません。
日本政策金融公庫も、自己資金は重要な要素の一つであり、それ以上に創業計画全体がしっかりしていることが重要だと案内しています。また、公庫の調査では、創業資金の調達総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度となっています。
つまり、自己資金については「何割あれば合格」という考え方ではなく、
開業に必要な総額はいくらか
→ そのうち自分でいくら準備できているか
→ 残りを借りても無理なく返済できるか
という資金計画全体で考える方が分かりやすいです。
融資審査では創業計画が重要になる
まだ営業実績のない創業前の段階では、過去の売上や決算書だけを見て返済能力を判断することはできません。
そこで重要になるのが「創業計画書」です。
創業計画書では、たとえば、
- なぜこの事業を始めるのか
- これまでにどのような経験があるのか
- どのような商品・サービスを提供するのか
- 誰を顧客にするのか
- 店舗・設備・仕入れなどにいくら必要なのか
- 自己資金と借入金をどう組み合わせるのか
- 開業後にどのくらい売上・経費が発生するのか
といった内容を整理します。
ここで大切なのは、「審査に通りそうな数字を書く」ことではありません。客数、客単価、営業日数、原価、人件費、家賃などから、なぜその売上や利益になるのかを説明できる計画にすることです。
特に店舗ビジネスでは、開業前の内装費や設備費だけに目が向きやすいですが、売上が安定するまでの家賃や仕入れ、人件費などの運転資金も必要になります。資金計画を作るときは、開業後まで含めて考えておくとよいと思います。
特定創業支援等事業を受けていると金利優遇につながることも
世田谷区や杉並区で創業するなら、区の「特定創業支援等事業」も確認しておきたいところです。
特定創業支援等事業とは、市区町村や地域の支援機関が行う創業支援のうち、「経営」「財務」「人材育成」「販路開拓」の4分野について、継続的に支援を受けるものです。
たとえば、世田谷区では創業相談や創業セミナーなど、杉並区では創業・経営相談や創業セミナーなどが対象になっています。所定の支援を受けたあと、市区町村から証明書の交付を受けることで、さまざまな優遇措置につながります。
代表的なものには、
- 会社設立時の登録免許税の軽減
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の特別利率A
- 自治体や東京都の創業融資での優遇
- 一部の補助金・助成金の申請要件
などがあります。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、認定市区町村が発行した有効な証明書を持っている場合、特別利率Aの対象になります。
また、特定創業支援等事業は「融資を受けるためだけの制度」ではありません。創業計画や資金計画を整理しながら支援を受け、その後の会社設立や融資、補助金などにもつながる仕組みなので、これから創業する段階なら早めに利用しておくメリットは大きいと思います。
なお、証明書を取得すれば自動的に融資や補助金を利用できるわけではなく、それぞれの制度について別途要件や審査があります。
世田谷区「世田谷区の創業支援等事業について」
杉並区「創業支援等事業計画」
関連記事:世田谷区で創業するときに確認したい支援制度|相談・融資・補助金を整理
関連記事:杉並区で創業するときに確認したい支援制度|相談・融資・補助金を整理
飲食店なら「生活衛生新企業育成資金」も確認する
飲食店を開業する場合は、「新規開業・スタートアップ支援資金」だけでなく、日本政策金融公庫の生活衛生新企業育成資金も確認しておきたいところです。
これは、飲食店、理美容業、旅館業などの生活衛生関係営業を創業する人や、創業後おおむね7年以内の人を対象とする融資制度です。
利用できる資金や限度額は、生活衛生同業組合への加入状況などによって異なります。また、振興計画の認定を受けた組合の組合員であれば、設備資金だけでなく運転資金も対象になります。
飲食店を開業するなら、「創業融資は新規開業・スタートアップ支援資金だけ」と決めつけず、こちらも含めて比較した方が良いですよ。
関連記事:飲食店を開業するときに必要になる主な手続
申込みは開業直前ではなく余裕をもって
日本政策金融公庫では、創業融資の申込みをインターネットから行うことができます。
これから事業を始める場合や、事業を始めて間もない場合は創業計画書を準備し、設備資金を申し込む場合には見積書なども必要になります。
また、日本政策金融公庫の案内では、申込みから融資が決まるまでの期間は平均的に3週間程度とされています。ただし、これはあくまで平均で、審査内容によってさらに時間がかかることもあります。
店舗開業の場合は、
物件を決める
→ 融資を申し込む
→ 内装工事をする
→ 営業許可を取る
→ オープンする
と単純に進められるとは限りません。
物件契約、融資、工事、許認可は互いに影響するため、開業予定日から逆算して余裕をもって資金調達を進めた方がよいでしょう。
関連記事:店舗物件を契約する前に確認したい許認可|用途地域・建築・消防・営業許可のチェックポイント
補助金と創業融資は役割が違う
開業資金を調べていると、融資より補助金の方が魅力的に見えるかもしれません。補助金は原則として返済する必要がないので、それ自体は大きなメリットです。
一方、多くの補助金・助成金は、申請しても必ず採択されるわけではなく、経費を支払った後に補助金が支給される仕組みです。そのため、開業時に必要なお金をすべて補助金で用意することは難しいと思います。
創業融資は、物件取得費や設備資金、開業後の運転資金など、実際に開業するために先に必要なお金を調達する手段として考えるものです。
そのうえで、利用できる補助金や助成金があれば組み合わせる、という考え方の方が現実的です。
関連記事:店舗開業で使える可能性のある補助金・助成金|家賃・内装・ホームページなど
まとめ
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、これから創業する人や創業後おおむね7年以内の人が利用を検討できる融資制度です。
また、創業期には原則として無担保・無保証人で利用でき、利率の引下げ制度もあります。現在は「自己資金を○%以上用意しなければならない」という一律の要件もありませんが、融資では自己資金だけでなく、事業経験や必要資金、売上見込み、返済可能性を含めた創業計画全体が重要になります。
店舗開業では融資だけを単独で考えるのではなく、物件契約や内装工事、許認可、補助金なども含めてスケジュールを組んでおくと進めやすいと思います。
対象地域: 世田谷区・杉並区
情報確認日: 2026年9月8日
主な確認資料
- 日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 日本政策金融公庫「創業支援貸付利率特例制度」
- 日本政策金融公庫「公庫利用Q&A」
- 日本政策金融公庫「創業計画書セルフチェック」
- 日本政策金融公庫「生活衛生新企業育成資金」
- 日本政策金融公庫「インターネット申込の必要書類のご案内」
融資制度の対象者、利率、返済期間などは変更される場合があります。実際に申込みを検討するときは、申込時点の制度内容を確認してください。
