店舗物件を探していると、「この物件は用途変更が必要かもしれない」「200㎡以下なら用途変更の申請はいらない」といった説明を聞くことがあります。
ここで注意したいのは、「用途変更」と「用途変更に伴う建築確認申請」は同じ意味ではないことです。
200㎡という数字は、用途変更に伴って建築確認が必要になるかを判断する重要な基準の一つですが、200㎡以下なら建築基準法上の確認がすべて不要になるわけではありません。
店舗を契約してから想定外の工事や手続が必要になることを避けるため、用途変更と200㎡の基準を分けて確認しておきましょう。
店舗の「用途変更」とは?
建物には、住宅、事務所、店舗、飲食店など、それぞれ使用目的があります。
既存の建物やテナントを、それまでとは異なる用途で使う場合には、建築基準法上の用途変更について確認が必要になることがあります。
たとえば、事務所として使用されていた区画を飲食店として使用する場合などです。
ただし、テナントが入れ替わっただけで必ず建築基準法上の用途変更になるわけではありません。変更前と変更後の用途がどのように扱われるかを確認する必要があります。
また、「その用途に変更できるか」という問題には用途地域による制限も関係します。
関連記事:店舗物件の用途地域|予定する営業ができるか確認する方法【世田谷・杉並】
用途変更で建築確認申請が必要になるのはどんな場合?
特殊建築物への用途変更では確認申請が必要になる場合がある
建築基準法第87条では、建物の用途を変更して、同法第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合に、建築確認に関する規定が準用されます。
第6条第1項第1号の対象となるのは、建築基準法別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものです。
別表第一には、飲食店や物品販売店舗、ホテル・旅館、病院、劇場など、さまざまな用途が定められています。
そのため、「用途を変更する=必ず建築確認申請が必要」ではありません。
変更後の用途、床面積、変更前後の用途の関係などから、確認申請の要否を判断します。
200㎡ちょうどと「200㎡を超える」は違う
建築基準法第6条第1項第1号の基準は、「200平方メートル以上」ではなく「200平方メートルを超えるもの」です。
そのため、200㎡ちょうどは「200㎡超」には含まれません。
ただし、ここでいう床面積をどの範囲で算定するかは、既存部分の用途なども含めて確認が必要になる場合があります。
「自分が改装するテナント部分が200㎡以下だから確認申請は不要」と面積だけで判断せず、変更前後の用途と建物全体の状況を含めて確認することが重要です。
類似する用途への変更では確認申請が不要になる場合がある
建築基準法第87条では、政令で指定する「類似の用途相互間」における用途変更について、用途変更に伴う建築確認の対象から除外しています。
類似用途については、建築基準法施行令第137条の18に定められています。
そのため、床面積だけでなく、
- 変更前の用途
- 変更後の用途
- 変更後が特殊建築物に該当するか
- 特殊建築物として使用する部分の床面積
- 類似用途相互間の変更に該当するか
を確認して、建築確認申請の要否を判断します。
200㎡以下なら用途変更を気にしなくていい?
200㎡以下だからといって、用途変更について何も確認しなくてよいわけではありません。
200㎡という基準は、用途変更に伴う建築確認申請の要否を判断する基準の一つです。
建築確認申請が不要な場合でも、用途変更後に適用される建築基準法の規定に適合する必要があります。
たとえば、用途地域による用途制限のほか、変更後の用途や建物の状況によって、防火・避難などに関する規定が問題になることがあります。
つまり、
「200㎡以下だから確認申請が不要」
と
「200㎡以下だから建築基準法上の問題はない」
は別です。
個別の物件について、自分で建築基準法への適合まで判断できない場合は、建築士や区の建築担当窓口などへ確認します。
内装工事をする場合は用途変更とは別の建築確認にも注意
用途変更に伴う建築確認が不要でも、同時に行う工事の内容によっては、別の理由で建築確認が必要になる場合があります。
2025年4月1日に施行された建築基準法の改正により、建築確認の対象となる建物の範囲が見直されました。
現在は、構造にかかわらず、階数2以上または延べ面積200㎡を超える建築物について、大規模の修繕・大規模の模様替を行う場合には建築確認が必要となる場合があります。
国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
ここでいう「大規模の修繕」「大規模の模様替」は、単に工事費が高い、大がかりな内装工事という意味ではなく、建築基準法上の定義によって判断されます。
そのため、
「用途変更部分が200㎡以下だから、今回の工事では建築確認は一切必要ない」
とは限りません。
用途変更の確認申請と、工事そのものについて必要となる建築確認は分けて考えます。
建築確認が不要でも消防の手続が不要とは限らない
建築基準法上の建築確認と、消防関係の手続も別です。
東京消防庁では、建築確認申請を必要としない場合でも、対象となる防火対象物について修繕、模様替え、用途変更などの工事を行う場合に、「防火対象物工事等計画届出書」の提出が必要となる制度を設けています。
用途変更について建築確認が不要だったことだけを理由に、消防関係も確認不要と判断しないようにします。
関連記事:店舗を借りる前に消防署へ相談するべき?テナント入居時の確認ポイント(近日公開予定)
用途変更を確認するときは現在の建物用途を調べる
用途変更について確認するには、まず変更前の用途が分からなければなりません。
店舗契約前には、少なくとも次の情報を整理しておくと確認しやすくなります。
- 建物・区画の現在の用途
- 自分が予定している用途
- 用途変更する範囲と床面積
- 建物全体の用途や規模
- 予定している内装・改修工事
- 確認済証・検査済証など既存建物の資料
不動産情報に「店舗」と書かれていることや、以前も何らかの店舗が営業していたことだけでは、建築基準法上の用途まで確認できるとは限りません。
確認済証や検査済証、建築計画概要書などから既存建物の情報を確認する必要がある場合もあります。
関連記事:店舗物件の確認済証・検査済証とは?契約前に確認したい建築書類(近日公開予定)
用途変更は店舗物件を契約する前に確認しておく
用途変更後に適用される基準を満たすために、設計変更や追加工事が必要になることがあります。
そのため、用途変更の可能性がある物件では、契約や大きな内装工事を進める前に確認しておくことが重要です。
確認するときは、
- 予定する営業内容を決める
- 物件の現在用途を確認する
- 変更後の用途を確認する
- 用途変更に伴う建築確認申請の要否を確認する
- 用途変更後に適用される建築基準を確認する
- 予定する工事について別の建築確認が必要でないか確認する
- 消防や業種別の許認可も別途確認する
という順番で整理すると、論点を分けやすくなります。
関連記事:店舗物件を契約する前に確認したい許認可|用途地域・建築・消防・営業許可のチェックポイント
世田谷区・杉並区で用途変更について確認するには
用途変更の基本的なルールは建築基準法によるため、世田谷区と杉並区で200㎡の基準そのものが変わるわけではありません。
世田谷区では、建築確認申請に関する手続を建築審査課が案内しており、用途変更時の工事完了届の様式についても案内されています。
杉並区でも、建築確認申請や各種申請・報告について建築課が案内しており、手続には時間を要するため余裕を持った事前相談を求めています。
なお、建築確認は区だけでなく指定確認検査機関へ申請することもできます。
個別の物件について用途変更や確認申請の要否を確認するときは、物件の住所だけでなく、現在用途、予定用途、床面積、図面、改修内容などを整理して相談すると確認しやすくなります。
200㎡は、「用途変更するかどうか」を決める数字ではありません。
変更後の用途が特殊建築物に当たるか、床面積がどの程度か、類似用途に該当するかなどを踏まえて、用途変更に伴う建築確認申請が必要かを判断します。
200㎡以下で確認申請が不要になる場合でも、用途地域や建築基準法上の規定、消防関係などの確認は別に必要です。店舗契約前には、面積だけで判断せず、建物と営業計画を合わせて確認しておきましょう。
対象地域
東京都世田谷区・杉並区を中心に解説しています。
情報確認日
2026年9月4日
主な確認資料
- e-Gov法令検索「建築基準法」
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」
- 国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
- 世田谷区「建築確認申請」
- 杉並区「建築確認申請」
- 東京消防庁「防火対象物の工事等計画の届け出をしよう」
法令や手続、建築確認の対象は改正されることがあります。また、用途変更の判断は変更前後の用途、床面積、既存建物の状況、改修内容などによって異なります。実際に物件を契約・改修する際は、最新の法令を確認し、必要に応じて建築士、区の建築担当窓口、指定確認検査機関などへ確認してください。
