飲食店営業許可を取るには、申請書を提出するだけでなく、店舗が定められた施設基準を満たしている必要があります。
飲食店営業許可の施設基準|店舗契約・工事の前にチェックしたい設備
飲食店営業許可は、申請書を出せば終わりというものではありません。店舗そのものが、定められた施設基準を満たしていることが前提になります。
シンクや手洗い設備、冷蔵庫、トイレはもちろん、厨房の区画、床・壁、給排水、換気なども確認の対象です。
とはいえ、「シンクは必ず二槽」といった単純な話ではなく、必要な設備は店で何をどう調理するかによっても変わってきます。
物件を借りて工事をしたあとに設備不足が発覚…とならないよう、まずは飲食店営業許可でどこがチェックされるのか、全体像を整理しておきましょう。
世田谷区・杉並区では東京都の施設基準がベースになる
世田谷区・杉並区で飲食店営業許可を取る場合、施設については東京都の食品衛生法施行条例で定める基準を満たす必要があります
この施設基準は飲食店に限らず、多くの営業に共通するもので、主に次のような事項が定められています。
- 店舗の構造や広さ
- 作業区域の区画
- 床・壁・天井
- 給水・排水設備
- 手洗い設備
- 食品等の洗浄設備
- 冷蔵・冷凍設備
- トイレ
- 原材料等の保管設備
- 廃棄物容器
- 換気・防虫防鼠設備
- 調理器具などの機械器具
詳しい基準は東京都「食品衛生法施行条例」の別表第二に定められています。
厨房など食品を扱う区域は、衛生的に管理できる構造であることが前提
施設には、屋外からの汚染を防ぎ、衛生的な作業を続けられるだけの構造・設備・広さが求められます。
食品への汚染を防ぐという観点から、作業内容に応じて間仕切りなどで区画を設けたり、工程に合わせて設備を配置したりすることも必要になります。
同じ建物内に住居など、食品を扱わない場所がある場合は、食品を扱うエリアと区画することも求められます。
床・内壁・天井については、清掃や洗浄、消毒がしやすい材質・構造であることが基本です。水を使って清掃するタイプの施設では、床の材質や排水についてさらに細かい基準が加わります。
手洗い設備は、調理用シンクとは別枠で確認を
飲食店の施設基準では、従業員が手指を洗浄・消毒するための流水式手洗い設備を、必要な数だけ設けることが求められています。
加えて水栓についても、洗ったあとの手指が再び汚染されない構造であることが条件です。
「水が出る洗面台さえあればOK」ではなく、調理場のどこに手洗い設備を置くか、水栓が基準に適合しているかまで、設計段階で確認しておきたいポイントです。
なお、トイレにも専用の流水式手洗い設備が必要になります。
シンクは本当に二槽必要?
「飲食店営業許可には二槽シンクが必須」と耳にしたことがある方もいるかもしれません。
現在の東京都の施設基準では、食品等を洗浄する設備について、使用目的に応じた大きさと数の洗浄設備を設けることとされています。
つまり条例上、「すべての飲食店に二槽シンクが必須」と一律に決まっているわけではないのです。
一方で、生の食材、調理器具、食器など、店内で何を洗浄するかによって、必要な設備は変わってきます。
東京都も、シンクを共用する場合には食品間の二次汚染に注意が必要だとし、複数槽がある場合の用途別・食品別の使い分けなどを案内しています。
東京都「シンク(流し)が原因で食中毒が起こることはあるのですか?」
ですので、「一槽だからNG」「二槽だから安心」と決めつけるのではなく、実際のメニューや調理工程を示したうえで保健所に確認することが大切です。
給水・排水設備もあわせてチェックされる
店舗には、必要な場所に適切な温度の水を十分供給できる給水設備が欠かせません。
水道水をそのまま使うケースだけでなく、貯水槽や井戸水を利用する場合についても、それぞれ基準が設けられています。
排水設備についても、次のような点が求められます。
- 十分な排水機能があること
- 汚水が逆流して食品を汚染しないこと
- 店舗外へ適切に排出できること
- 配管に十分な容量があること
居抜き物件であっても、既存の給排水設備が今回の営業内容に合っているとは限りません。契約前に確認しておきたいところです。
冷蔵庫・冷凍庫、食品の保管設備も忘れずに
取り扱う食品に応じて、衛生的に管理できる冷蔵・冷凍設備が必要です。
また、冷蔵・冷凍設備には温度計を備えることが施設基準で定められています。
原材料についても、食品の種類や特性に応じた温度で、汚染を防ぎながら保管できるだけの設備が求められます。
洗剤や殺菌剤といった薬剤は、食品とは区分して保管する設備が必要です。
トイレにも施設基準がある
トイレは、作業場に汚染の影響を与えない構造であることが条件です。
従業員の人数に応じて設置し、トイレ専用の流水式手洗い設備も備える必要があります。
つまり、既存物件にトイレがあるからといって、それだけで飲食店営業許可上問題なしとは言い切れません。店舗のレイアウト全体とあわせて確認しておきましょう。
換気や害虫対策も基準の対象になっている
食品を扱う場所の上部は、結露しにくく、かびや水滴による食品汚染を防げるよう、適切に換気できる構造または設備であることが求められます。
必要に応じて、ねずみや昆虫の侵入を防ぐ設備、侵入してしまった場合に駆除するための設備も必要です。
厨房機器だけでなく、店舗全体を衛生的に保てる構造になっているかどうかが見られる、と考えておくとよいでしょう。
「簡易な営業」に該当すると、基準が一部緩和されることも
飲食店営業のうち、取り扱う食品や営業形態が「簡易な営業」に該当する場合は、一部の施設基準について緩和規定が用意されています。
たとえば、次のような営業が例として挙げられています。
- そのまま食べられる既製品を開封・加温・盛り付けして提供する
- 半製品を揚げる、焼くなどの簡易な最終調理をして提供する
- 米飯を炊飯する
- 冷凍パン生地を焼成する
- 飲料を提供する
こうした営業内容によっては、床・内壁、排水設備、冷蔵冷凍設備、区画について一部緩和できる場合があります。
ただし、「メニューが簡単だから自動的に基準が緩くなる」というわけではありません。実際の営業内容をもとに保健所が判断するため、事前確認は欠かせません。
物件契約・工事の前に、図面を持って相談しておく
飲食店営業許可の施設基準で特に気をつけたいのは、工事が終わってから初めて確認するのでは遅いという点です。
世田谷区は、施設の工事着工前に設計図などを持参して保健所へ事前相談するよう案内しています。
杉並区の営業許可申請手引きでも、同じく施設工事着工前に設計図などを持参して相談するよう案内されています。
設備やレイアウトに問題があった場合、工事後に直すよりも、設計段階で変更するほうが対応しやすいものです。
特に次のような物件では、契約や大きな工事に進む前の相談をおすすめします。
- 既存のシンクや手洗い設備をそのまま使いたい
- 居抜き物件を借りる
- 厨房スペースが狭い
- トイレと厨房の配置が近い
- 給排水設備の追加工事が難しい
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まとめ
飲食店営業許可の施設基準は、「シンクを何槽置けばいい」といった一つの設備だけで判断できるものではありません。
営業内容や調理工程に応じて、手洗い、洗浄設備、給排水、冷蔵設備、区画などを組み合わせて確認していく必要があります。
物件を借りて工事を進めたあとに問題が見つかることのないよう、営業内容と店舗図面が固まった段階で保健所に相談しておくことが重要です。
対象地域
世田谷区・杉並区
情報確認日
2026年9月7日
主な確認資料
※施設基準や行政機関の取扱いは変更される場合があります。また、必要な設備は営業内容や調理工程によって異なります。実際に物件契約や工事を行う際は、所管の保健所へ最新の基準と計画内容をご確認ください。
