居抜き飲食店でも営業許可は取り直しが必要?

居抜き飲食店でも営業許可は取り直し? のアイキャッチ

居抜きの飲食店なら、前の店が使っていた営業許可をそのまま使えるのでしょうか。

結論からいうと、厨房設備や内装をそのまま引き継ぐだけでは、前の営業者の許可をそのまま使うことはできません。

新しい営業者として店を始めるのであれば、原則として自分で飲食店営業許可を取得する必要があります。

ただし、前の営業者から営業そのものを「事業譲渡」によって引き継ぐ場合には、一定の手続により営業許可上の地位を承継できる制度があります。

「居抜き物件を借りること」と「営業許可を承継すること」は別なので、まずこの違いから確認しておきましょう。

目次

居抜き物件でも営業許可が自動的に引き継がれるわけではない

居抜き物件とは、前の店舗が使用していた内装や厨房設備、什器などが残された状態で引き継ぐ物件を一般にいいます。

シンクや冷蔵庫、厨房設備がそのまま残っていても、営業許可そのものが物件や設備に付いているわけではありません。

食品衛生法上の営業許可は営業者に対して与えられるものです。

そのため、前の店が飲食店営業許可を受けていたとしても、単にその店舗を借りて別の人が新しく営業を始めるのであれば、前営業者の許可番号や営業許可書をそのまま使って営業することはできません。

通常は、新しい営業者として営業許可を申請し、施設基準への適合について保健所の確認を受けることになります。

関連記事:飲食店営業許可の申請方法【世田谷区】
関連記事:飲食店営業許可の申請方法【杉並区】

「設備を引き継ぐ」のと「事業を引き継ぐ」のは別

居抜き店舗で特に混同しやすいのが、

店舗や設備を引き継ぐこと

と、

前営業者の事業そのものを譲り受けること

の違いです。

たとえば、前の飲食店が閉店した後、その物件を大家や不動産会社から借り、残されていた厨房設備を使って自分の店を開く場合は、設備を利用しているだけで、前営業者から飲食店営業そのものを譲り受けたとは限りません。

一方、前営業者との間で飲食店の営業を事業として譲り受ける場合には、食品衛生法上の「事業譲渡」による地位承継の対象となる可能性があります。

居抜きであるかどうかだけでは判断できない点が重要です。

事業譲渡なら営業許可を承継できる場合がある

2023年12月13日に改正食品衛生法が施行され、営業許可を受けている営業を第三者へ譲渡した場合、譲受人が営業許可上の地位を承継できる制度が設けられました。

この制度を利用できる場合、新しい営業者が改めて新規の営業許可を申請するのではなく、営業者の地位を承継した旨を届け出ることで手続を行います。

食品衛生法第56条では、許可営業者が営業を譲渡した場合、その営業を譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定められています。

東京都も、2023年12月13日以降に食品衛生法上の許可または届出に関する事業を第三者へ譲渡した場合には、地位承継の手続によって営業者を変更できると案内しています。

東京都保健医療局「食品衛生法における営業の事業譲渡について、営業許可・届出の地位の承継が可能になりました」

したがって、

「営業者が変われば必ず営業許可を最初から取り直す」

というわけでもありません。

単なる居抜き契約なら「事業譲渡」とは限らない

注意したいのは、居抜き物件を契約しただけで事業譲渡による地位承継ができるわけではないことです。

地位承継の手続では、実際に営業の譲渡が行われたことを確認できる書類が必要になります。

たとえば世田谷区では、事業譲渡による地位承継について、

  • 営業者の地位承継届
  • 譲渡が行われたことを証明する書類(譲渡契約書等の写し)

を提出するよう案内しています。

譲渡を証明する書類では、譲渡人・譲受人、対象施設、業種、営業許可または届出に関する事業を譲渡したこと、譲渡年月日などが確認できる必要があります。

必要書類で譲渡の事実を確認できない場合、世田谷区は、廃業届に加えて新たな営業許可申請が必要になると案内しています。

杉並区でも、事業譲渡による地位承継について、営業許可書と譲渡契約書等の「営業の譲渡が行われたことを証する書類」を案内しています。

物件の賃貸借契約や厨房設備の売買だけを見て、「許可も引き継げる」と判断しないことが重要です。

居抜きでも設備が現在の施設基準に適合するとは限らない

新たに営業許可を申請する場合、居抜き店舗で既存の設備が残っていても、現在の施設基準に適合しているか確認する必要があります。

「前の店が営業できていたのだから、そのままで大丈夫」とは限りません。

前営業者が営業していた当時から、

  • 店舗の設備が変更されている
  • 自分が予定する調理内容が異なる
  • 使用する厨房機器が異なる
  • 店舗のレイアウトを変更する
  • 必要となる営業許可の種類が異なる

といったことも考えられます。

営業許可に必要な設備は、単に設備があるかどうかだけでなく、実際の営業内容や調理工程との関係も確認する必要があります。

★関連記事:飲食店営業許可の施設基準|店舗契約・工事前に確認したい設備

事業譲渡の場合でも改装するなら事前に確認する

営業許可上の地位を承継できる場合でも、店舗を自由に改装してよいという意味ではありません。

世田谷区では、営業施設の構造設備を変更した場合には変更届を提出し、施設の構造・設備を示す図面を添付するよう案内しています。

杉並区も、店舗の設備を変更・改装する場合には、変更・改装前に保健所へ相談するよう案内しており、変更内容によっては新しく許可を取り直す必要があるとしています。

居抜き店舗を取得した後に厨房や客席の配置を大きく変える予定がある場合は、「事業譲渡だから既存の許可をそのまま使える」と考えず、工事前に保健所へ相談しておきましょう。

居抜き物件を契約する前に確認しておきたいこと

居抜き飲食店を検討している場合は、少なくとも次の点を確認しておくと手続を整理しやすくなります。

  • 前の店舗がどの営業許可を受けていたか
  • 今回は物件・設備だけを引き継ぐのか
  • 前営業者から営業そのものを事業譲渡で引き継ぐのか
  • 自分が予定するメニューや営業形態に必要な許可は何か
  • 既存の厨房設備が現在の営業計画に合っているか
  • 店舗を改装する予定があるか
  • 地位承継の対象になる場合、譲渡を証明する書類を用意できるか

特に、「前の店に許可があった」という事実だけで契約を判断しないことが重要です。

居抜き物件には既存設備を利用できるメリットがありますが、営業許可の手続まで自動的に省略できるわけではありません。

まとめ

居抜き飲食店でも、単に店舗や設備を引き継ぐだけなら、前営業者の営業許可をそのまま使うことはできません。

一方、前営業者から飲食店営業そのものを事業譲渡で引き継ぐ場合には、地位承継の手続によって新規の営業許可申請が不要になる場合があります。

「居抜きかどうか」ではなく、何をどのような契約で引き継ぐのかを確認したうえで、契約・改装前に所管の保健所へ相談しておきましょう。


対象地域
世田谷区・杉並区

情報確認日
2026年9月3日

主な確認資料

※制度や必要書類、行政機関の取扱いは変更される場合があります。また、地位承継の可否は実際の譲渡内容によって異なります。物件や営業の譲渡契約を行う際は、所管の保健所へ最新の手続をご確認ください。

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